CMと商品陳列は同じなんです
今回ちょっとだけめんどくさい計算が入ってくるんですよ。
頑張って頭フル回転させて説明します。
テレビを見ていたら、「あれこのCMさっきも見たな」って時ありますよね。
何回も見過ぎると「もういいよ!」ってなる時もありますけど、こうやって何度もCMを流すのは意味があるんです。
GRP(延べ視聴率)という考え方
GRPという数値があるんです。
なんだっけな…えぇっと…。
グラス・レーティング・ポイントの頭文字を取ったものです。
直訳すると、全体の視聴率。
日本語では延べ視聴率と言われています。
単位は%で表されます。
このGRPは計算によって出すんですが、その計算式は
視聴率×流した本数
です。
つまり視聴率20%の番組に5本CMを流すと
20×5で100%分のGRP獲得です!おめでとう!
でも、広告業界でのGRPはこれじゃないんです。
到達率×平均接触回数
こっちが広告業界が扱うGRPです。
到達率というのは、その番組を見ていてどれだけの人がそのCMを見たか。
CMの間はトイレタイムだ!
とか
CMの間に溜まってた洗濯物を干さなきゃ!
とか、はたまた
CMの間に別の番組を見よう!
っていう状況、ありますよね?
そういった、番組は見ていてもCMは見ていない可能性を考慮するわけです。
そして平均接触回数は、そのまま何回そのCMを見たのかです。
さっきの100GRPの話に戻すと、例えばその番組を見ていた全員=100%がCMも見ていた場合。
GRP100%=100×1
100%が見ているので平均接触回数は1回という計算になるわけです。
今度はその番組を見ていた人の半分=50%がCMも見ていた場合。
GRP100%=50×2
平均接触回数は2回、となります。
と、ここまで書きましたが、実はそこまで単純な話じゃないんですよ。
テレビ番組とは?
テレビ番組というのは毎日たくさん流れている。
そしてその番組ごとに、視聴率がある。
視聴率15%の番組に4本、視聴率10%の番組に7本、視聴率5%の番組に4本のCMを流したとします。
そうすると、GRPは
15×4+10×7+5×4=60+70+20=150%
になります。
そして各番組は見ている層が違うことが多いわけです。
ワイドショーだと主婦層。
ニュースだと比較的年齢が上の男性。
アニメだったら子供や大きなお友達。
といった感じで。
そうなってくると、到達率は各番組ごとに変わってくるのでそこからさらに平均値を…と広告業界で扱うGRPを出す計算が難しくなります。
ターゲットを絞ろう
さらに!
誰に向けたCMなのかというのも重要ですよね?
女性向け化粧品のCMなのに男性向け番組に流しても効果が薄いのは誰でも分かることです。
なので、流す番組と時間帯も重要になってくるわけです。
でも「この番組のこの時間にこのCMを流して!」っていうのは、あまりできません。
あまりと書いたのは、「出来るには出来るけど費用がかかりすぎて特別な時にしか行われない」からです。
そこで重要なのが先ほどのGRPなんです!
そもそもCMの時間は、1週間あたりのテレビ番組放映時間に対して18%までという決まりがあるんです。
つまりテレビ局側がCMを流せる時間には限りがある。
そこに出てくるGRP!
CMを1ヶ月でGRP1000%分!といった形でテレビ局に渡すわけです。
そうすると、テレビ局側はそのGRPを消化するためにCMを割り振っていくんです。
視聴率1%の番組にだけそのCMを流すとなると、1ヶ月で1000回も流さなければならない。
これは現実的じゃないですよね?
視聴率20%の番組にだけそのCMを流すと、1ヶ月で50回。
これは現実的な数字です。
こうやって、高いGRPで出したCMは必然的に視聴率の高い番組に割り振られていくわけです。
そして視聴率が高い番組は、それだけ狙っている層が見ている確率も高まっていく、となるんです。
つまり!
視聴率が高いと、それだけ流したCMのGRPをテレビ局側は消化できる。
テレビ局が視聴率をめちゃくちゃ気にしているワケが分かってきましたね。
こうやって書くと「じゃあ低視聴率の番組にCMを流すメリットがないじゃないか!」ってなりますが、実はメリットがかなりある。
それが、先ほど広告業界側で書いたGRPの平均接触回数なんです。
低視聴率の番組というのは、その番組のファンが継続して見ている状況が多いんです。
コアなファン層と言われる人たちです。
つまり特定の人だけを狙える穴場スポット的意味合いが強い。
そんな番組に数本CMを流すと、流した分だけCMを見た回数が増えていく。
高視聴率の番組にCMを流して、500人が1回ずつCMを見た。
低視聴率の番組にCMを流して、50人が10回ずつCMを見た。
GRP的には同じですが、平均接触回数は大きく違います。
そして、どちらの方が効果が高いか、というのは実のところ答えはありません。
1回だけCMを見て「これを買おう!」と思う人はいますし、10回見ても「何回も見せられて邪魔だなぁ…買わないのに…」と思う人もいます。
そこで重要になるのがCMの質という部分になってくるわけですが、それはまた別の機会に。
テレビCMと商品陳列は同じなんです
さて、タイトルに書いた部分。
CMと商品陳列は何が同じなのか。
またまた例えばという話。
「本日のオススメ!」と店先に1日商品を置きます。
そして、店の中に「店員の一押し!」と1週間商品を置きます。
本日のオススメ!の方は、その日店を通りがかった人が全員一度は目にします。
対して店員の一押し!の方は、店内に入ってきた人が1週間目にし続けます。
高視聴率番組に絞り込んでCMを流した場合と、低視聴率番組に高頻度にCMが流れた場合。
これと同じなんです。
本日のオススメを求めて店内に入ってきた人は店員の一押しも見ることになるじゃないか!
とか言わないでください、あくまでたとえ話ですので…。
なんでこんな話をしたのか、というと。
デザインの仕事で広告を出す事も多くあって、そうなるとやっぱりマーケティングをするわけです。
どの層に、どれだけの数見せたいのか。
もちろん「全員にたくさん!」というのが本音でしょうけど、現実的じゃないです。
若年層なのか、年配層なのか、男性なのか、女性なのか。
きちんと絞り込んでより高い効果を出すために分かりやすい数字を提示する。
これがやっぱり大事です。
そしてCMの世界での未来を話すなら…。
アメリカでは既に行われているらしいですが、録画視聴者層。
日本は視聴率は放映時間に見ているライブ視聴率しか計算していないんです。
でもCMを見ている層というなら、録画で見ている人もいるはずです。
CMカットとかCMスキップ機能もあるので到達率で言えば少ないんですが、それでも一定数は必ずいる。
さらに、動画サイトの広告。
最近は通勤・通学時に約90%の人が動画サイトを見ているそうです。
その内、約50%が動画の前に流れる広告を視聴しているという統計があります。
こちらも、広告が流れて5秒でスキップが出来る機能がありますが、興味があれば最後まで見る人はいます。
録画視聴者層に向けて、「この時間この番組にこういったCMが流れましたよ」とSNSなどでアピールをする。
動画サイト閲覧層に向けて、興味を持って最後まで見てもらえるように、最初の5秒で一気に引き込む動画広告を作る。
というように、媒体ごとのマーケティング・広告の出し方・広告デザインの3つを全て組み合わせた、新しいマーケティングビジネスを生み出さなければいけないんじゃないかと思います。
そしてそれらに精通したマーケティングプランナーが今後は生まれてくるのかな、と。
アメブロだと若年層、はてぶだとそれより少し上の年齢層、FC2ブログは情報系、というようにネットブログですら住み分けがされ始めています。
発信する側も受け取る側も、自分が本当に与えたい・欲しい情報なのかを考える、広告知能のようなものが必要な時代になってきました。